編集室だより

2023年3月30日発行 No.129 春号

星田 宏司

■前号に記した、京都の珈琲の店 コハク「嘘瑚」での話の続きを書くことにする。この店のことは、多分、京都旅行のガイドブックで記されたことがないはずであるが、何年か前に、コーヒーの仕事の折り、四条大橋の下に降り、鴨川べりを散策しながら、案内書を見ていたところ、舐園真にある名所の建仁寺があることを知り、いつも寄る「珉珉」でとる夕食にはまだ時間があるので、行って見ようとした途中で、たまたま見つけ、値段の安さと、店の雰囲気が気に入り、また寄ってみたいと思っていたことが、今回のサプライズとも言えることにつながったのである。

■その思わぬ出来事とは、先客二人がカウンターに座っていたため奥の四人席にどうぞと案内されたことから、体験したことである。

■コーヒーを飲みながら、京都新聞や週刊誌をゆっくり飲んでいたところ、先客の二人が食事を終えたあと、「失礼ですけれど、今日は練習日なので、よろしいでしょうか」と言うので、お店を出ないと
いけないのかと思ったところ、そのまま居てくださってかまいませんとのことで、コーヒーも残っているし、座り続けていた。

■練習日と聞いて、ピアノやベースも日直いてあり、ジャズのCDや雑誌も多数あるため、すぐにジャズの練習だと分っていたので、聞いていてもいいのだなと解釈し、座っていたのである。

■すると、カウンター内に入っていた二人の女性の一人も加わり、その方がピアノ、お客の二人がトランペットとベースの担当で、練習が始まった。私のすぐ前での生演奏の一曲目を聞いて、驚いてしまった。

■私はジャズについては、詳しくはないけれど、日本でもライブに何度か行ったし、アメリカのコーヒーツアーの度に、みんなと必ず聞きに行っていたので、演奏のレベルが、素人のグループかプロなのかぐらいは、分るつもりなのだが、すばらしいハーモニーなのである。仕付にピアノのなめらかさと、トランペットの響きには引きこまされた。

■練習と言えば練習だが、本番そのままに近い練習が5曲続き、その昔を観客一人で堪能させてもらうという、まったく予期せぬ、すばらしい体験をさせてもらった。

■休憩になったので聞いたところトランペッターの人は、別のグループからも、しばしばお願いされる腕前とのこと。うっかりグループ名を聞かなかったが、京阪神でのジャズファンには、有名なのではなかろうかと思う。

■いつまでも居るのも迷惑かと思い、お礼を述べ、コーヒー代と、心ばかりのチップを置き、店を後にしたが、希有な体験に、心豊かになっていた。

■ところで、京都ガイド本を書いている、柏井壽という作家がいる。光文社から何冊か出ているが、どれも良いガイド本である。後で知ったのであるが、彼はまたテレビドラマになった『鴨川食堂』の原作者でもある。テレビでは亡くなった歌手の萩原健一が出演したものを、私も二、三度見ていた。 ■その後、原作があることを知り安く出ていると買い求め、5冊ほど読んで、その低流にある、人を思いやる作者の執筆姿勢.に共感を覚えると同時に、京都の料理店やホテルを伝える作者の力量に、京都の喫茶店、そして今だ知られぎる店のことなども書いて欲しい……などと、勝手に思ったりしている。光文社さん、どうですか。
■2月中旬に、本誌にも書いていただいている、ハワイでコーヒー農家を体験された山岸秀彰氏の本『美味しいコーヒーを飲むために(栽培編)』を出版した。 ■この本は、今まで出版されたコーヒー本とはまったく違い、栽培から見たコーヒーの美味しさを追究したもので、出版した甲斐のある手応えを感じている。 ■内容は、コーヒー栽培の全過程の紹介と問題点を提起し、いかにキレイなコーヒーの実を収穫するか、特に、実際に実を摘む労働者(ピッカー)の労働条件を改善する必要性を語る。

主要内容は、コーヒー栽培の条件・土壌・精製と選別・病害虫・ピッカーとはどんな人たち・美味しいコーヒーとは・ピッカーの付加価値等。自家焙煎店主必読書。本体1,430円。

■著者の山岸氏は、6月4日(日)に開催される「日本コーヒー文化学会総会」で、記念講演をされる。問い合わせは、同会事務局 電話078-302-8288へ。

日本コーヒー文化学会北海道支部主催 第6回 焼いてみよう! 淹れてみよう! 開催のお知らせ
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